皮膚がん

基底細胞癌

基底細胞癌とは

黒色のほくろに似た癌です。 皮膚がんのなかで日本人のみならず世界で一番多いがんです。 基底細胞がんは、毛を構成する細胞ががん化したものです。 転移を起こすことは非常にまれですが、放っておくと皮膚から筋肉、骨などを破壊します。

原因

紫外線によって引き起こされる可能性が高く、70%が紫外線にさらされる頭や顔に発生します。年齢とともに発生数も増加しています。 見た目は小さな黒いほくろのようですが、だんだん大きくなり盛り上がってきます。中心部がへこんで潰瘍になり、そこから出血することもあります。

検査は、基本的にダーモスコピーで皮膚病変を診て診断します。ダーモスコピーで判断が付かないものは、局所麻酔をして皮膚病変の一部を切り取って顕微鏡で調べる組織検査を行って判断します。 転移することはほとんどないため、CTによる全身精査は必要ありません。

治療

治療としては、全切除が基本です。組織検査により取り切れている場合には完全に治すことができます。 大きさや部位、進行度によって、治療方針が決定されます。

低リスクであれば3mm、高リスクであれば5~10mmがんから離して切除することが推奨されています。 手術ができる部位であれば、切除をします。切除だけで治療できるがんとはいえ、再発を起こしやすいがんであるため、切除の際には取り残しがないよう注意が必要です。 顔に発生した場合などは、できるだけ切除範囲を小さくしたいところですが、小さく切除してがんを取り残してしまうと再発し、数年後にさらに大きな切除が必要になることもあります。がんを切除した後は、小さいものはそのまま縫い合わせますが、大きい傷は植皮や皮弁など、整容面にも配慮した再建が必要になります。

また、取り残しを避けるために、切り取った組織の端にがん細胞があるかどうかを調べるための組織検査をして、がん細胞が取り切れているかどうかを確認します。結果が出るまでには約1~2週間かかります。 そのため、1回目の手術でがんを切除した後は、切除した場所に人工真皮をかぶせるなどして、いったん手術を終了します。病理検査でがんが確実に切除できたと確認できたら、2回目の手術で切除部位を再建します。 このように切除と再建を2回に分けて行うことを二期的手術といいます。 万一、病理検査でがんの取り残しがわかったら、再び手術を行い、がんを切除します。

悪性黒色腫

悪性黒色腫とは

皮膚の中に、メラニンを産生する細胞する色素細胞(メラノサイト)がありますが、これが癌化したものが悪性黒色腫です。 通常、皮膚の悪性黒色腫は黒く「ほくろ」のように見えるので、「ほくろのがん」といわれています。 通常の良性のほくろは簡単に悪性に変化するものではないと考えられています。 しかし、良性のほくろと思っているものの中に、悪性黒色腫の初期のものが含まれることもあるため、皮膚腫瘍専門医の診察が必要となります。

特徴

リンパ行性,血行性に転移しやすく,悪性度が非常に高いです。 発生頻度および好発部位は,人種や国によって大きく変化し,紫外線の影響が大きいです。日本では人口10万人あたり約2人(年間発症 1,500 〜 2,000 例)と考えられています。 近年、悪性黒色腫は増加傾向にあり腫瘍の見た目の印象が重要となります。 黒褐色をきたす病変をみた場合、常に悪性黒色腫の可能性を考えます。

診断

早期の悪性黒色腫とホクロとを肉眼的に鑑別するのは困難ですが、診断のポイントとして、次のポイントを疑う所見となります。

  1. 全体が非対称的
  2. 形が凹凸不整
  3. 黒色、茶褐色、青色などが入り混じり
  4. 色の濃さが不均一
  5. 大きさが7mm以上
  6. 隆起している箇所がある
  7. 大きさや形が変化してきている

また、医師が目で見て、悪性・良性を診断していましたが、当院にある「ダーモスコピー」により、診断の精度をより高めることができます。

治療

一部組織を採取する検査皮膚生検は腫瘍が拡大するおそれがあるため禁忌ということになっていましたが、すぐにに拡大切除するならば基本的に問題ないとされています。

当院で組織検査により確定し、診断した場合には連携している大学病院へ速やかに紹介し治療にあたります。また進行期には、免疫チェックポイントに注目した生物学的製剤や分子標的薬により、一昔前よりも生命予後の改善がみられています。

有棘細胞癌

有棘細胞癌とは

皮膚の構成している表皮細胞が癌化する皮膚癌で、発生頻度の高い皮膚癌です。 紫外線の影響を受けた頭皮、顔面の皮膚に発生するものが増えています。 その他に慢性炎症、ウイルス、放射線などの原因があります。

治りにくい傷や潰瘍、紅色で出血しやすいもの、硬い角化性結節などが出現したら有棘細胞がんを疑います。 病変が大きくなると浸出液や悪臭を伴うこともあります。 見た目から有棘細胞癌を疑った場合、組織検査を行い確定診断します。 早期のものをボーエン病とよばれています。

治療

皮膚癌より0.5~2cm程度離して切除する必要があります。 腫瘍切除後の皮膚欠損が大きく、傷を縫い閉じることが難しい場合、再建術(植皮もしくは局所皮弁)を行うことがあります。

病変の大きさや深部への広がりの程度によって、リンパ節転移をきたしている可能性が疑われる場合は連携している大学病院へすみやかに紹介し以下の治療を行います。

リンパ節転移が確認できた場合は、所属リンパ節をすべてとる郭清術を行います。 放射線治療は手術に比べ根治率はやや劣りますが比較的高い効果があることが示されており、切除が困難な部位に発生した例や、年齢や合併症などで手術が難しい場合に選択されることがあります。 化学療法は手術治療が不可能な進行例や遠隔転移をきたした例に適用されます。