虫さされ

虫さされ

皮膚炎を引き起こす原因となる主な虫としては、カ、ブユ、アブ、ノミ、トコジラミ、ハチ、ケムシなどの昆虫類、そしてダニ、クモ、ムカデなどの昆虫以外の節足動物が挙げられます。

吸血する虫

カ、ブユ、アブ、ノミ、トコジラミ、ダニ

刺す虫

ハチ

咬む虫

クモ、ムカデ

触れることで皮膚炎をおこす虫

有毒のケムシ

虫さされ

なお、「虫」ではありませんが、クラゲやヒトデ、魚類などの海生動物にも刺すものがあり、皮膚炎を起こすことが知られています。

皮膚症状

虫刺されによって生じる皮膚症状には、大きく分けると「痛み」と「かゆみ」があります。

痛み

痛みには、虫が皮膚を刺したり咬んだりすることによる物理的な痛みと、皮膚に注入される物質の化学的刺激による痛みがあります。

代表的なのは、ハチに刺されたりムカデに咬まれたりすることによって皮膚に注入される有毒物質が激しい痛みを引き起こす場合です。

かゆみ

かゆみは、皮膚に注入された物質(毒成分や唾液腺物質)に対するアレルギ-反応によって生じます。そして、アレルギー反応には主に即時型(すぐに起こる)反応と遅延型(ゆっくり起こる)反応があります。

即時型反応は、虫の刺咬や吸血を受けた直後からかゆみ、発赤、蕁麻疹などが出現し、数時間で軽快する反応です。 一方、遅延型反応は、虫の刺咬や吸血を受けた1日~2日後にかゆみ、発赤、ぶつぶつ、水ぶくれなどが出現して、数日~1週間で軽快する、という反応です。

全身症状

全身症状としては、強いアレルギー反応が起こり、全身の蕁麻疹、腹痛、呼吸困難、意識消失など、アナフィラキシーと呼ばれる症状が出現する場合があります。特に注意が必要なのはハチで、中には刺されて30分以内にショック状態になって生命に危険が及ぶような特異体質の人がいます。

海外からの様々な生き物

最近では海外から様々な生き物が国内に侵入していますので、これらの生き物によって被害が生じる可能性もあります。

毒グモ

毒グモのセアカゴケグモはすでに国内のほぼ全域で見つかっており、咬まれると激しい痛みだけでなく筋肉痛や吐き気、下痢、頭痛、血圧上昇などの全身症状をきたすことがあります。

ヒアリ

輸入コンテナなどから国内に侵入しつつあるヒアリはハチと同様に毒針を持っており、刺されることで痛みやアナフィラキシー症状を起こすことがあります。

ネコノミ

屋外ではスネや足など膝から下を集中的に刺されるのが特徴で、しばしば水ぶくれを作ります。そしてとても強いかゆみがあります。室内で飼っているネコやイヌにノミが寄生している場合は体や腕など、衣類から肌の出ている部位から吸血しますので、これらの部位に皮疹が見られます。

ブヨ

ブヨは刺されている時は痛み、かゆみをほとんど感じないので気付かないのですが、吸血部に小さな出血点が見られるのが特徴です。刺されて半日くらいすると刺された所が赤く腫れて次第に激しいかゆみを生じます。時には掻きむしっているうちに硬くなり、かゆみのある赤いしこりが長く残る慢性痒疹という状態になる人もいます。

トコジラミ

寝ている時に肌の出ている首や腕、手などから吸血するので、これらの部位にかゆいブツブツが出現します。

ダニ

ダニは顔や手足はほとんど刺さず、わき腹や下腹部、ふとももの内側などを刺して、かゆみの強い赤いブツブツができます。

マダニ

マダニは体長2~8mmの大型のダニで、本来は野生動物に寄生しています。マダニは山道沿いの草地やササ藪、河川敷などに生息し、人間が通るとその体に取りついて、皮膚から吸血します。そして数日~1週間後にはダニの腹部が数mm以上の大きさに膨らみ、飽血状態となって脱落します。吸血中のマダニを無理に引き抜こうとすると、頭部が皮膚に残って炎症を起こすことがあります。また、ダニの種類によってはライム病や日本紅斑熱などの感染症を媒介することがあります。

ドクガ(毒蛾)類

ドクガ類の毒針毛は長さ0.1~0.2mmの微細なもので、幼虫1匹に数十万本以上が密生しているため、これに触れると激しいかゆみを伴うジンマシンのような症状、あるいは赤いブツブツが多発します。これは首やうでに集中して生じるのが特徴で、掻くことで次第に増数します。 都市部や市街地ではツバキやサザンカにつくチャドクガの幼虫による被害が多く、問題になっています。庭木の手入れをした後に発症することが多いですが、ケムシに触れた覚えがなくても皮膚炎を生じる例が意外に多いようです。

イラガ類

イラガ類の毒棘に触れると、その瞬間にピリピリした激しい痛みと発赤が出現し、1~2時間で一旦治まります。しかし、その翌日に同部が赤く腫れてかゆみを生じることがあります。 主に西日本の人家周辺ではサクラやカエデ、バラ、クスノキなどにつくヒロヘリアオイラガの幼虫による被害が多発しています。

予防

虫除けスプレ-などの忌避剤を用いることで、ある程度の防除は可能です。現在、市販されている虫除け剤(忌避剤)として、ディートとイカリジンがあります。いずれもすぐれた忌避効果がありますが、皮膚にムラなく塗り伸ばすことが重要です。

濃度の濃いタイプ(ディート30%、イカリジン15%)は、忌避効果は同じで、効果の持続時間が長くなります。 なお、ディートには、小児に対する使用上の注意として、顔には使用しないこと、生後6ヶ月未満の乳児には使用しないこと、2歳未満の幼児では1日1回、2歳以上12歳未満の小児では1日1~3回の使用にとどめることなどがありますので、必要に応じて適切に使って下さい。イカリジンには小児に対する使用制限はありません。

治療

虫刺されの治療は副腎皮質ホルモン(ステロイド)の外用薬が必要です。虫刺されの多くは1~2週間以内に改善します。しかし症状が強い場合は抗ヒスタミン薬やステロイドの内服薬が必要になるので、皮膚科専門医を受診するのがよいでしょう。